“ホラー漫画の神様”楳図かずお。恐怖とユーモアで魅了した88年の軌跡

日本のホラー漫画界の巨匠・楳図かずお。彼が遺した『漂流教室』をはじめとする作品群は、今なお多くの人々を魅了し続けている。
2024年10月「ホラー漫画の神様」楳図かずおが亡くなった。 彼の作風は、恐怖とユーモアを巧みに融合させた独特のスタイルが特徴。古くからの楳図ファンでもある現代ホラー漫画の第一人者、伊藤潤二からは「画家ダリにも引けを取らない」と評されたほどである。 作品はホラー以外にも、SFやギャグ、時代劇など多岐にわたり、代表作の一つ『わたしは真悟』はフランスの漫画祭で賞を獲得するなど、日本のポップカルチャーの発展に多大な影響を与えた。今回はそんな楳図の代表作を紹介する。実は有名なあの作品も…?

©楳図かずお/小学館
まず紹介するのは、1972年に発表した『漂流教室』。 突如として未来世界へタイムスリップした小学校を舞台に、極限状況下での人間の本質を描いた傑作。物語は主人公の少年を中心に展開し、予想外の事態に直面した際の教師たちの脆弱さや、極限状況下での人間の行動と心理を緻密に描写した、楳図漫画を代表する作品。

楳図かずおの代表作品『漂流教室』の表紙 ©楳図かずお/小学館
1976年の『まことちゃん』は、ホラーとは一線を画すギャグ漫画として知られる。主人公のまことちゃんの「グワシ!」というポーズは社会現象となる一方で、ユーモアの中に鋭い社会風刺を織り交ぜた内容になっている。

ギャグ漫画『まことちゃん』の表紙 ©楳図かずお/小学館
1982年には、人工知能を持つロボットの真悟と少女との交流を描いた『わたしは真悟』を発表。人間とAIの関係性やアイデンティティの問題、そして愛と孤独といった哲学的なテーマを深く掘り下げた。この作品はフランスで行われた欧州最大規模の漫画の祭典「アングレーム国際漫画祭」で遺産賞を受賞。永久に残すべき遺産に認められた。これは、日本人作家の作品としては、3作品目となる快挙である。

『わたしは真悟』の表紙 ©楳図かずお/小学館
そして、1990年に発表した『14歳』では、遺伝子操作や倫理観といった現代社会の問題を題材に使用した。この作品でも、楳図かずおは単なるホラーやSFの枠を超えて、深い社会問題や人間の本質を描くことで、読者に強烈なインパクトを与えることとなった。

『14歳』の表紙 ©楳図かずお/小学館
ちなみに、1966年には、国民的ヒーロー『ウルトラマン』のコミカライズを手がけていたことも。 TV放送された特撮のウルトラマンと比べるとホラー色が強く、楳図節満載のウルトラマンに仕上がっている。

「楳図かずおの『ウルトラマン』上」の表紙 ©楳図かずお/小学館
楳図の活躍は漫画業のみならず、作詞家や映画監督、赤と白のボーダーシャツをトレードマークとするタレント活動など、様々な分野で才能を発揮。 彼の明るいキャラクターと、そこからは想像もつかない唯一無二の絵のイマジネーション、素晴らしい作品たちは世界中で愛され、日本が世界に誇る漫画家の一人として、その名は永遠に語り継がれていくだろう。
(2024年12月時点の情報です)
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